第4章 反社会性パーソナリィ障害 Antisocial パーソナリィ障害(APD)


第4章 反社会性パーソナリィ障害 Antisocial パーソナリィ障害(APD)
ポイント
・反社会性パーソナリィ障害(APD)患者はしたい時にしたいことをやる。
・誰にでも嘘をついて騙す。
・衝動的でいらいらしていて攻撃的である。
・なくしたくなかったら、財布や貴重品を置きっぱなしにするな。彼らの前に置くのなら、置く
方もどうかしている。
一秒ごとにカモが生まれている —-unknown
反社会性パーソナリィ障害(APD)患者は精神病質(サイコパシー)や社会病質(ソシオパシー)を持つ
と言われてきた。(言葉の定義は確定的ではないが、精神病質はDNAの病理に近く、社会病質は生
育環境の病理に近い。)
彼らの病気は社会の法律に従うつもりがない、あるいは従うことができないというものである。
彼らは社会規範や法を破る。
患者の多くは子供の頃に行為障害(素行障害)を持っていた。
精神科医がAPDの治療を頼まれたとしたら、それは感謝されない仕事である。彼らのパーソナリ
ィ障害は格別に扱いにくい。
精神薬理学や精神療法がどんなに進歩しても、医学の枠組みの外で処遇するのがベストである。
彼らは事において自己愛的であるばかりではなく、衝動的で攻撃的で嘘つきである。
彼らは命知らずだ。安全になってもなお、自分の命も他人の命も軽んじる。いったん他人を傷つ
けたとなると、合理化することもできるし無視することもできる。
彼らの超自我は消えてしまっていると、精神分析家は教えている。
キーポイント
APD患者は決まりを守る必要を感じない。
APD患者はたいていは何がルールであるかは知っている。ここが自閉症、精神病、発達遅滞、認
知証患者とは違う。彼らは規則や法や標準に従わないことを選んだのである。人々はそれらに従
って生きているので、APD患者は自分たちのことを他の人達よりも優秀だと思っている。優秀な
のだから破ってもいいのだと考える。むりやり標準に合わせている必要はないと考える。目立つ
ことを楽しめばいいのだが、彼らは創造的ではない。他人が苦しんでいても、彼らは何も思わ
ない。
臨床スケッチ———-
ダニーは背の高い、がっしりした29歳、女性に魅力的と思われていることを知っている。仲間
とボーリング場のあたりをうろうろして機会をうかがっていた。彼はそこで32歳の会計係パムと
知り合った。映画と高価な新しいレストランに食事に誘った。ダニーはきちんとした服装で、最
後の10ドルでパムのためにバラを買った。映画はプライベートな上映会で、彼は受付で自分の名
前があるはずだと言い張った。映画館の支配人は彼の名前を見つけられなかったが、ダニー
はチャーミングだったので通してもらえた。ロブスターとシャンペーンのディナーが終わって、
ダニーはクレジット·カードを忘れたと言いパムが支払った。
5ヶ月後、ダニーはパムの部屋に移り住んだ。彼女からお金を借りて、給料が出たらすぐに返す
と言った。パムはこっそり彼の外出中にe-メールを見て、彼が無職なのを知った。帰宅して問いた
だした。かれはパムをなだめて、長い話をした。それから数ヶ月彼はパムをだまし続けた。そし
て彼女に、ダニーは監獄にいたことがあること、6歳の男の子がいること、その子をサポートして
いないことを知られて、部屋を追い出された。
ディスカッション
ダニーはDSM-IVのAPDの診断基準に当てはまる。
他人の権利を認めず踏みにじる広汎なパターンは15歳時から始まっていた。以下の3つまたはそれ
以上に当てはまる。
(1)法律を尊重して社会規範に合わせることができない。同じことを何度もやって逮捕される。
(2)人をだます。繰り返し嘘をつく、偽名を使う、人をだまして利益を得たり楽しみを得たりする

(3)衝動性。計画できない。
(4)イライラ、攻撃性。肉体的暴力、暴行。
(5)他人や自分の安全を軽視し向こう見ずなことをする。
(6)常に無責任。常勤職を続けることができない。借金を返さない。
(7)良心の欠如。他人を傷つけた、虐待した、他人から盗んだ場合に、無関心であったり、いいわ
けをしたりする。
APDは第一度近親者にAPDが多い。多ニーの父親もそうだった。ダニーの父親は無責任で虐待し
、ダニーが10歳の時に離婚した。ダニーは母親と暮らしたが、父親は援助しなかった。APDは女
性よりも男性に多い。男性で3%、女性で1%である。
精神療法は滅多に成功しない。しかしセルフヘルプグループは、もし患者が同意するなら、有益
であるとされている。APDに関連しての怒り、不安、抑うつをコントロールするために薬剤が使
われる。精神刺激剤がSDHDとAPDの合併の場合には勧められる。
APDは他のパーソナリティ障害と、またシゾフレニーと鑑別が必要である。
キーポイント———-
APD患者がきちんと振る舞ったからと言ってだまされてはいけない。
面接をすると、APD患者は驚くほど落ち着いて信頼できそうに見える。
外側はチャーミングで人の気にいられる態度であるが、緊張して敵意に満ちた内面があり、爆発
してソシオバシーになる。
面接中にストレスが加わると、内面の精神病理が垣間見えることがある。
もしあなたがAPD患者にだまされたとして、被害にあったのはあなたが最初ではないだろうとい
うことを思い出しておきたい。
彼らを扱う最善の方法は、彼らの心の中の一番の関心事に付き合うことである。これは容易では
ない。彼らの関心はあなたの関心とは違うからだ。彼は変わらないだろう。そのことで納得でき
ない気持ちになるだろうが、しかしあなたは自分の一貫性を保たなければならない。
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1.他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以来起こり、以下のうち3つ(またはそれ以上
)によって示される。
法にかなう行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為をくり返
し行なうことで示される。
人をだます傾向。これは自分の利益や快楽のために嘘をつくこと、偽名を使うこと、または人を
だますことをくり返すことによって示される。
衝動性、または将来の計画をたてられないこと。
易怒性および攻撃性、これは身体的なけんかまたは暴行をくり返すことによって示される。
自分または他人の安全を考えない向こう見ず。
一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさ
ない、ということをくり返すことによって示される。
良心の呵責の欠如。これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人の物を盗んだりしたこと
に無関心であったり、それを正当化したりすることによって示される。
2.患者は少なくとも18歳以上である。
3.15歳以前発症の行為障害の論拠がある。
4.反社会的な行為が起きるのは、精神分裂病や躁病エピソードの経過中のみではない。

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